学年主将対談

・参加者

川合 淳也(2020年東大剣道部主将及び4年学年主将)

森川 莞地(3年学年主将)

福島 大喜(2年学年主将)


・司会

伊藤 慧(3年新歓係)

伊藤 桜(3年新歓係)


・対談

Q1.「学年主将を1年生のうちから決める」ことに何らかの意義を感じますか?

森川 「まだ三年なので(主将の役割について)全部わかっているわけじゃないですけど、『逆算しやすい』というのが一つのメリットじゃないですか。あくまでゴールは4年生の時なので、そこから逆算して今どういう状況かというのを早い段階から考えられるという点が挙げられるかと。川合先輩どうですか?」

川合 「うーん、確かに逆算は下級生の時から結構していたねえ。代(=学年)としての課題なども掴もうという意識が生まれたし、そういう点で、逆算できるというのは良いことだった。」

伊藤桜 「代としての課題というのは?」

川合 「技術的に足りないところ、というのもあるし、例えばうちの代は一つにまとまるというよりは個性が強いかな。トガってる代だね(笑)。学年としての傾向っていうのも、1年生から主将をやることで、掴まなければという意識が生まれる。」

伊藤慧 「福島はどう?決める時モメたんじゃないの?」

福島 「確かにモメました。もともと3年になってから主将らしい人、副主将らしい人、ということで役職が決まっていくものだと思ってました。でも、みんなで話し合って決めていくなかで、主将らしい人が主将になるのではなく、主将になった人が主将らしく育っていくという考えもあるのではないかとなりました。1年生の間から職を与えられることで責任感とか、部に関わっているんだって気持ちが芽生えるんじゃないでしょうか。だから1年生の間に決めるのは良いことだといまは思います。」


Q2. 各学年の「色」と各学年主将の「色」との間にはどんな関係がありますか?

伊藤桜 「学年主将から見た自分たちの学年のカラーについて聞きたいと思います。」

森川 「3年生は、真面目だと思う。一言で言ったら真面目。協調性がすごくあるわけではない(笑)が、仲は良い方。」

伊藤慧 「確かに低い(笑)協調性は。」

森川 「悪く言ったら自己中。」 

伊藤慧 「そういうカラーのなかでなにか学年主将が果たせる役割みたいなのはあるの?」

森川 「考えてみたんだけどあんまり明確な答えは…。『主将』というと引っ張っていく要素が強いが、どう引っ張っていくかというのがあって、僕は最初『剣道で引っ張っていくのが主将の役割だ』と思っていたけどそれだけでもなさそう。一人一人考えてやっている中で、引っ張って行こうとしたら僕の考えや剣道観を押し付けてしまうことにも繋がってしまう可能性もある。だから今明確な答えは出せないかな。」

伊藤慧 「『引っ張っていく』ってのは稽古について?」

森川 「基本的には稽古についてかな。目に見える、一番大きな主将の仕事ってのは『号令をかける』こと。号令をかけるというのは簡単そうに見えて難しいことで、やらないとわからない部分もあるが、そのところをどうしていったらいいかいま考えている。」

川合 「号令はムズいね。」 

伊藤慧 「やっぱり号令が違うと稽古も違うものですか?」

川合 「どうだろう?去年の主将と俺の号令を比べても違いがあると思うな。」

森川 「学年だけでなく、川合先輩と山﨑先輩(*4年副主将)でも違うんじゃない?」

川合 「今年の2年生のカラーは?」

福島 「2年生のカラーは留学生や院生が他の代より多いことですかね。勉強という面では、例えばアハマド(*2年、イランからの留学生かつ院生)の、宇宙でコンクリートを使う研究など、刺激になる部分もあります。剣道という面では良い意味で隔たりが無いですね。だから次の代にも、院生の人に入ってきてほしいです。」

伊藤慧 「うちの部の特徴として、『各学年に院生がいる』というのは大きいかもね。そのことについて、他の学年はどんな感じですか?4年には上林先輩もいらっしゃるわけですけども。」

川合 「年齢が上の人でもいつの間にか打ち解けているよね。」

森川 「逆に向こうが気を使ってくれているんじゃないですか?特に最初のうちとか。部に入ってすぐの頃は、院生は人生経験が豊富ってこともあって、よく助けてもらった。新原(3年の院生)は理科大で主将をやっていたことだし。」 

伊藤桜 「『年齢に関係なく打ち解ける、受け入れる』というのは部全体のカラーかな。」


Q3. 毎年2月の一年生合宿(*注1)は、各学年、あるいは学年主将にとってどのような意義がありますか。

川合 「あの合宿で、自分の代のカラーがわかったという面は大きい。自分がどう率いていくか、主将としてどう動くべきかという方向性は、一年合宿でつかんだ、というか修正した(笑)。最初は主将としてガンガン引っ張って行こうと思っていたが、うちの代はトガっているし、でもなんだかんだ一人一人しっかり考えていて他人に干渉されるのを嫌がるんだよね。学年主将ってのは『引っ張っていく』というよりもむしろは『飾り物』みたいなものだと思った(笑)。今の小さい班(*注2)みたいに、一人一人が小さい団体を率いて、『飾り』として主将が置かれているのっていうのが良い。そこまで俺が主張する必要はないかなと思った。でもそれがすごくわかった合宿だった。福島はどうだった?」

福島 「うーん…。先輩がおっしゃっていたように、各部員一人一人が自分の課題について考えているのがわかりました。東大剣道部が自主性に重きを置いていて、高校みたいに顧問の先生がバリバリに主導するのではなく、自分たちで考えて号令をかけてやっていくというスタイルであることを実感し、自主的で良いなあと思いました。」

伊藤慧 「どういう機会を通じてそう思ったの?」

福島 「夜ミーティングをしていて、私と柳澤(*2年の副主将)で考えたメニューに対し、ほかの部員から『こうしたほうがいいんじゃないか』といった意見がかなり多く飛び交っていて、そういうところで、皆考えているんだなということがわかりました。」

伊藤慧 「俺たちの学年はどうだった?」

森川 「全体としては、『思った通りにいかないな』と思った、スケジュールや道場のスペースの面で。はじめてのことだったから新鮮だった。うちの学年のときも、皆が考えて剣道をしていることがわかった。はじめて、『森川が学年主将でやっていくんだな』というのが、僕自身もそう思ったし、周りからもそういう目で見られて、『ちゃんとやっていかないといけないな』と思った。『周りもそういう雰囲気にしてくれたのかな、』というのも感じた。ミーティングも、全部ではないが一つの方向にまとまったりして、割とみんなが支えてくれたのを感じた。学年主将だけじゃなくて学年副主将も。神崎(*3年生の副主将)は僕から見ても、『割と発言してるな』という感じだった。学年副主将にとっても大きなターニングポイントだったんじゃないかな。」


Q4. 各学年の主将から見て、他の学年はどんな風に見えますか?

川合 「下級生を見ていると、下級生の方が意見を交わし合っていると思うね。うちの代としては今のスタンスが多分心地よいのだけど、下級生が話し合っているのはすごく良いことだと思う。下級生の取り組み方はすごく刺激になっている。」

伊藤慧 「具体的には?」

川合 「福島の学年が深夜に稽古していたり(*注3)とか、集まって稽古しているのを見ると、俺も一年の頃の方がトガってたなあと思う。そういう取り組みを見て、すごく刺激になっている。」

伊藤慧 「下級生というと、今の3年生についてはどうですか?」

川合 「森川たちの代は、まとめ方が上手い感がある。言い表すのが難しい感じのいい雰囲気。次の代なのがすごく心強い。すでに、組織としてのまとまり感がある。」

伊藤桜 「森川が頻繁にミーティングを開いてくれるから、向く方向がわかりやすくなっているのかなとは思うね。」

森川 「川合先輩に関して言うなら、行動が早いですよね。そこはとても参考にしています。」

川合 「俺の代は、とりあえず俺があまり何も言わずに行動して、それを水野(*4年主務)や山﨑が言語化してくれるから成り立っている(笑)。役割分担だね。とりあえず俺は気にせず行動するかな。福島とかどう?どういう風にしていきたいとかある?」

福島 「とりあえず今、何かを決める時はみんなで決めるようにしてます。自分の判断に自信がない、というのもあって、皆に相談して決めるようにしてますね。」

森川 「それは、もし割れたらどうするの?多数決?」

福島 「納得するまで話し合います。でも60人のトップになった時そのやり方はできないので、これから学年が上がったときにどうしていくかは考えていかないといけないなとは思います。」


Q5. 学年が上がるときに、学年主将として何か変化はありましたか?

森川 「2年になるときは結構ありました。仕事がなくなったことで、後輩ができた実感が湧きましたね。後輩については、とりあえず『目をかける』ことはしっかりやっていこうと思っています。」

川合 「3年になるときは?」

森川 「3年になるときは、まあ今ですけど、半分折り返しか、という意識がありますね。福島、今どう?」

福島 「新人戦、ジュニア戦(*注4)では自分の代が中心となってやっていかないといけないので、先輩みたいにチームをまとめていけるか、という不安はあります。」

森川 「ジュニア、新人は難しいよね。慧、出る側として、一年と二年で違いはあった?」

伊藤慧 「いや俺はなかった。(勝ち抜きで)最終的に大将が負けたら負けるってルールでしょ?大将が負けなければ負けないわけで、もしチームが負けたら大将のせいだと思ってたから(笑)。」 

森川 「それ、超緊張したよ。自分が勝たなきゃいけない立場っていうのは。」

伊藤慧 「大将として出る試合が増えるというのは、学年主将の一つの特徴かもね。」

森川 「そこは、(下の学年で出るのと)気持ち的に大きく違うなあ。勝たなきゃいけない立場にあるというのがまず一つでしょ?あと大将だったら、チームの流れを見ないといけない。自分のことだけ考えてちゃいけないわけ。練習試合で、部員の試合を見ていたら自分の気持ちを作るのが遅れてしまったこともあった。そういうところも大将としての難しさだと思う。まあ慣れていかないといけないのかな。川合先輩どうですか?」

川合 「俺は事前準備をしっかりやりたい派だから、当日そんなにビビることはなかったな。でも事前準備ではすごく不安になった。当日するべきことは書き出したりとかしたね。応援も含めて、気を使う要素が、大将になってから増えた。」


Q6. 試合では、学年主将には「誰を出して、誰を出さないか」を選ぶという仕事がありますが、そこについて何か思うところはありますか?

川合 「昨年の選考に関しては、選ぶ明確な根拠ができるまで山﨑ととことん話し合ったね。ボーダーのところで線引きする根拠を見出せない場合は選考試合をした。決める時の責任感は本当にデカい。俺は一人で背負いこむの嫌だから、みんなに積極的に話してた。」

森川 「いいんじゃないですか?私も神崎と杉山(*3年主務)に結構話しました。『これで行こうとおもうんだけどどう?』という感じで聞いて、結構助けてもらいました。」

伊藤慧 「(メンバーを自分たちで決めるのもまた)高校と違うところですよね。」


Q7. 他に東大剣道部が高校の剣道部と違う点はありますか?

森川 「私の学校は高校の頃、明確な目標とかなかったんで、その点、東大剣道部は『チームとして定期戦(*注5)で勝つ』という明確な目標が定められている。そこは、私は大きな違いだと思いました。」

福島 「高校の時よりも先輩方と話す機会が増えましたね。『部で』という意識は大学の方が強く、高校はどちらかというと『学年で』という感じでした。」


Q8. 最後に、新入生に向けてメッセージをお願いします。

福島 「剣道部に入ると、戦友ができるよって感じです。」

森川 「入ってみれば良いと思います。新鮮なことに触れる機会もいっぱい用意されているから、入るかどうか迷ってる人はぜひ入って欲しいです。」

川合 「学年主将を置く仕組みなどは高校と大学で大きく違うと思います。でもこのシステムには良いところがたくさんあって、主将になった時、各学年にまとめ役がいるってことで心強さもあるし、その学年主将を軸に学年がまとまっていくことで東大剣道部としての一体感を持てるんじゃないかと思っています。最初は戸惑うかもしれないけど、現状では組織としての良い形になるのに役立っているように感じます。新入生のみなさんも、いつ入れるかわからないけど、入ったら11月ごろ学年主将を決めることになります。学年主将になったら、早いうちから剣道部としてどう動くべきか等を考えていくことになります。楽しみな気持ちでそれを迎えて欲しいし、そこから運営自体を楽しんで欲しいと思っています。新入生が入部してくれるのを楽しみにしています。2,3年の学年主将はこんなにしっかりしているので入った後絶対楽しく過ごせること間違いなしです。」


・注釈

*注1「一年生合宿」:一年生だけで毎年2月頃に合宿をします。稽古からミーティングまで、何もかも一年生だけでおこなうはじめての機会です。いろいろと大変で稽古もキツくなりがちですが、同期だけでする合宿というのもなかなかおもしろいものです。意外な一面が明らかになったり?

*注2「班」:剣道部全体では60人近くなるので、1年から4年までの各学年を3~4人ずつ含んだ十数人から成る縦割り班というものをつくっています。さらにその中でもトレーニングなどの単位として3~4人程度の班を設けています。

*注3「深夜の稽古」:年によっては、「年越し稽古」などと称して12/31の夜から1/1の朝にかけて有志で稽古をしたりすることがあるらしいです。ストイックですねえ…。

*注4「新人戦」「ジュニア戦」:新人戦は毎年10月下旬ごろにおこなわれる関東学連主催の公式戦で、1,2年から成るチームで出場します。ジュニア戦というのは、毎年10月上旬ごろにおこなわれる一橋大学剣道部との定期戦に含まれるイベントで、ここでも1,2年のみでチームを編成します。どちらも4年になってからの本番の大会のイメージをつくるために重要な試合です。

*注5「定期戦」:毎年、防衛大学校一橋大学京都大学ソウル大学校との交流試合があります。試合によっては勝ち抜き戦をやったりして応援も大変盛り上がる、とても楽しいイベントです。毎年ホームとアウェイとを交互に交代するので、希望すれば韓国に試合半分、旅行半分で行くことができます!

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